樋口一葉　「真筆版　たけくらべ」　限定千五百部・昭和１７年・四方木書房・帙入

「たけくらべ」の真筆版は、これが最初の企てではない。大正７年、一葉二十三回忌の紀念として博文館から出版された。忌日に集まった人々に配られたことを覚えている。鏑木清方が口絵を書き、幸田露伴と島崎藤村とが序文を書き、泉鏡花、戸川残花、佐々木信綱、三宅辰子、岡野知十、平田禿木、戸川秋骨、馬場狐蝶がそれ〲長短の文章を寄せている。小型の本ゆえ、真筆も縮写されているし、原稿紙は消されてしまって、白地に文字だけのジンク版のように印刷されているに過ぎない。真筆を彷彿としている点に於いては、この版の方がはるかにオリジナルに近いのである。この版は文字は原寸大である。（中略）一葉については、まだ私たちのしなければならない仕事は幾つか残されていると思うが、兎にも角にもこの出版で、その幾つかのうちの一つを果たし得たことを渡しは仕合せと思いたい。昭和十七年九月二七日（付属の小島政二郎解読用「たけくらべ」より）四方木書房・昭和１７年１０月限定千五百部発行の樋口一葉「真筆版　たけくらべ」帙付きです。和綴じ本で表紙と扉は漉和紙装です。別冊「解読たけくらべ」が付属します。ヤケが少しありますが、シミや書き込みや蔵書印などはありません。本の綴じ糸も切れはなく、よくもあの戦火を潜り抜けてきて今あるのだと感心します。本篇・帙・解読書付きの完本です。日本近代文学館から出ている名著復刻全集「真筆たけくらべ」は、「文芸倶楽部」掲載草稿を縮写、凸版にした大正７年の発行の「真筆　たけくらべ」小型本の復刻本です。８１年前の古書であることをご理解の上、購入の検討をお願いいたします。

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